LOST

守るほど弱くない君に、 せめて認めてもらえるように 強くなる 【lost Xmas.〜誉ver〜】 「こんなトコにいたのかよ」 「…ギン」 そう言って、 俺はシュンを後ろから抱きしめられた。 シュンは俺だと分かっているからか、特に抵抗しない。 そのことを嬉しく思いつつ、 再び問いかける。 「何してんだ?シュン」 「今日は月が綺麗だから」 すると、そう言ってシュンは空を仰いだ。 俺もそれに続く。 それが、馬鹿みたいに綺麗だったから思わず、 「ホントだな」、と声を漏らした。 後ろからの同意の声に、 シュンは「でしょ」と返す。 月がシュンのようにも見えて、 愛しいとまで思えると言ったら、 君はどんな顔をするだろうか。 俺たちはまだ夜の世界ではライバルだ。 つまり、決着はついていない。 楽しい喧嘩。 可愛い言い争い。 変わらない関係に。 満足しているとも、していないとも言えないでいる自分がいる。 ある日、俺はシュンに言った。 ーーーー好きだ…。 抗争の最中、 戦っていたはずの俺とシュン。 気が付けば両チームの目の前で総長同士がキスをしていた。 ありえない。 無論、俺はすぐにシュンの蹴りをくらい、 その後は、爛たちどころがミヤやヒコにもリンチされかけた。 仲間に庇われながら、 口を押さえ顔を真っ赤にして俺から目を離せないでいるシュンの姿に、 周りに殴られながらも笑みが零れた。 初めて見た時、 既に俺はシュンに囚われていた。 どうしても欲しくて欲しくてたまらなかった。 悶々とした中、 あの学園にやつは来た。 ボサボサ髪の眼鏡男。 その外見に誰もが近寄りたくないと思っただろう。 ついたあだ名はダサヤン君。 靴箱の一件(act.4参照)もあって興味本位で見に行ったらマジダサかった。 けど、俺はその身長だとか、 体のラインだとか…、 何となく空気が心地良くて、コタに調べるよう命令した。 その直後、事件は起こり、 体育倉庫の惨状を見て、 殴られてぼろぼろの野郎から犯人を聞いて、 歓喜した。 間違いないと…。 佐渡春日はシュンだと。 感極まって、気が付いたら教室に乗り込み、 確認の為にシュンについて聞く。 微かだが揺れた空気に内心で哂いが込み上げた。 そして、生徒会室から出て行こうとしたあいつが、 ほんの少し解いた警戒。 ほら、あの時と… キスしたときと同じ。 ありとあらゆる可能性を考えないとダメだろうが、シュン。 そして、二度目のシュンとのキス。 忘れた事のなかった唇の感触に、確証のない確信。 そしてシュンは今、俺の腕の中に収まっている。 残念ながら、あれ以来告白をしていない俺は返事をもらえていない。 動いているようで変わっていない距離。 たまに憤りは感じても、 前のように焦る気持ちはない。 それは前より好きじゃなくなったとかじゃなくて、 手が届く距離にこいつがいるから。 あぁ…でも、 今日くらいは挑戦しても良いかもしれない。 だって今日はクリスマス。 コイビトたちの日なのだから。 「シュン…」 「ん?っんん!?」 通算、3度目のキスは、 とてつもなく甘かった。 「シュン、好きだよ。」 月が見守る中、 愛しい君へ、 愛を告げる。 まだ怖いから、 返事は求めないけれど。 そうだな、 俺がお前に勝ったら、 その時は、 有無を言わさず連れ去るから、 だからその時は、 覚悟しな。 -END-